Vol.012 フォトレジスト現像過程の直接観察

出典:Itani T. and Santillan J.J.   In situ Characterization of Photoresist Dissolution. Appl. Phys. Express 2010

要旨

フォトレジストとは、光や電子線によって物理的性質や化学的性質の変化を起こす樹脂材料であり、プリント基板や半導体素子へのフォトリソグラフィに用いられる。

フォトリソグラフィはフォトレジストを塗布した表面を露光することで、表面上に露光と非露光のパターンを作る技術(パターニング)であり、集積回路の製造には高いパターニングの精度が求められる。
パターニングの確認は電子顕微鏡で観察する方法が一般的であるが、現像前、現像後の状態しか観察することができず、その過程を観察することはできなかった。

そこで、本研究では高速AFMで観察しながら現像を行う方法を考案し、その現像過程の観察を試みた。

Keyword: フォトリソグラフィ

フォトリソグラフィは大きく分けて、コート(レジストの塗布)、プリベーク(レジストの硬化)、UVによる露光(レジストの反応)、現像(レジストの除去)という4つの段階で行われる。
フォトレジストは感光した部分が溶解する「ポジ型」と、感光した部分が硬化する「ネガ型」の2種類が存在する。
溶解したフォトレジストは現像液によって除去される。

観察結果

レジストをコートしたウェハ(半導体素子製造の材料)に、32 nm 幅の直線状にUVを露光したものを、高速AFMを用いて測定した。
まず、純水環境下で走査し、一定時間が経過した後、観察溶液プールに現像液を注入し、ウェハ上のレジストに現像液が作用する様子を観察した。
その結果、現像液を注入するとウェハの表面が粗くなり、浮き上がる様子が観察された。
さらに時間経過とともにレジスト粒子が溶解し、刻印された直線状のパターンがあらわになった。
このように、高速AFMは現像過程の直接観察に応用可能であることがわかった。
今回可視化された現像過程の様子は、レジスト材料の分子設計にも活用可能であると期待される。

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出典論文

Itani T. and Santillan J.J. In situ Characterization of Photoresist Dissolution Applied Physics Express 2010;3(6) doi: 10.1143/APEX.3.061601
https://iopscience.iop.org/article/10.1143/APEX.3.061601

使用機種

サンプルスキャン型高速原子間力顕微鏡 SS-NEX

高速AFMのご紹介

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